声優への憧れ
声優として様々な活動を行う井上真希さん。声優への道を目指したきっかけは、アニメに出演している声優たちの声の演技に驚いたこと。
「フィクションのはずなのに、本当にその場その世界のキャラクターが生きているように感じる」
このことが、井上さんが「声優」という職業に惹かれていくきっかけとなりました。
特に実感したのはイベントステージでの生アフレコを見学した時。
キャラクターとは見た目や性別、年齢も違うはずの声優さんたちが、マイク前に立って声を出した瞬間に、作品の中で実際に生きているキャラクターにしか見えなかったという。生き生きとしていてとても輝いて見えたそう。
そして、そんな表現を私もしてみたい。声優という仕事はすごい!と感動したそうです。
井上さんの場合これに加え、幼少期に一人で朗読のテープを聞いて過ごしていた経験があり、「家族以外の人間の声に癒される」ということを実感し、自分の声を使って誰かを元気にしたり癒したりすることが出来るのではないかと思ったそうです。
もうひとつの夢「保育士」を叶えながら声優への道を模索
高校生時代、井上さんは進路を決めきれずにいました。
実は声優への憧れを抱くと同時に、子ども好きの井上さんは「保育士」という職業にも憧れを抱いていたのです。
声優への憧れの方が強いのは確かですが、保育士にも魅力を感じます。
さてどうするか。
そこで井上さんは考えました。
もしすぐに声優になれなくても、別のお仕事をしていたとしても、「いつか声優として輝く」という事を決めている。だから子どもが好きという気持ちを優先してまずは保育士への道を進むことにしよう。
並行しながら声優への道を模索していくことにし、まず行動に移しました。
声優への道を一番に捉えながらも、他の仕事を経験したり、タイミングを見計らったりすることが自分自身には必要だと考えたのです。
結果として、現在声優として演技をするときも、保育士として子どもの感情表現を間近に見た経験から、演じる際の気付きにつながるということがあるといいます。
例えば幼児の男の子の役。一般的にわんぱくな少年を想像しがちですが、実際の子どもたちは全員がわんぱくというわけではありません。
元気な子どももいれば、本や絵が好きで一人の時間を大切にしている子どももたくさんいるのです。
実際に井上さんが演じたのは「内気な子ども」の役で、その時は実際に保育園にいたある子どものことを想像しながら演じることが出来ました。まるでその子の力を借りて演技をしたような気持ちだったそうです。
120%の力 は存在する⁉
初めての声優としての仕事の記憶は絶対に忘れられないという井上さん。
録音ブースに1人で入室した時の緊張。自分とキャラクターしかいない無音の空間。汗だくになりながら収録を行ったと言います。その時は自分が持つ100%の力を出し切ったと思っていたに違いありません。
ただ、自分一人では絶対に出せなかった力を発揮できたことがあったそうです。
それは「かけあい」の演技。
かけあいの演技は、複数の声優が同時に音声を収録するというもので、先輩・後輩などの枠にとらわれることなく同じ空間で同じ作業を行うことになります。
そこで、井上さんは「先輩に背中を押される」という経験を実際に体験したと言います。
憧れの先輩と同じ環境にいる!という自分の意識や先輩からのあたたかい支援があったのでしょうか。「能力が増幅する」と実感するような、自分だけでは引き出すことが出来ない表現を収録することが出来たといいます。
自身の憧れとする方と同じ仕事をするという経験は、自身のエネルギーとなって演技に反映されるのです。
自分の声を聴いて練習すること
練習時は必ず自身の声を録音して客観的に聴くようにしているという井上さん。
練習の際、自身の声を聴き、役柄やシーンに合った感情が伝わっているのかどうか。そして感情をどれだけ大きく、かつ的確に表現できているのかを毎回確認しているのです。
「とてもモヤモヤする作業だ」という風に井上さんは例えます。
頭ではこう表現したいと思っていても、実際に演技をして聞いてみるとなんだか物足りない。でも実際に耳で聞いてみないと何が足りないのかわからない。
自身の練習で吹き込んだ声になかなか納得できないことも多く、悔しい思いをしながらもずっと続けているそうです。
ただ、このような地道な努力の継続が井上さんの素晴らしい演技の源となっているのです。
井上さんの考える声優の興味深さ
声優という仕事は、楽しい職業でありながら幅広さや奥深さがある興味深い職業だと言います。
真似をして「それっぽく似たような」演技をするということはできたとしても、声優自身の経験や演技を磨くことによってしか生まれない演技は、その人の個性であり武器になりえます。
それを少しでも磨くことが役者として大事だと考えています。
その「経験」とは声優としての経験だけでなく、日常での経験も加味されます。
どれだけ役柄に入り込んでも最終的には声優それぞれの「味」が出るはずです。
井上さんは知的な大人の女性や凛とした役など、一本芯がある役を演じるのが得意。意外とおっちょこちょいな面があるなど、そのギャップも含め演じていてとても楽しいそうです。
磨いた個性を武器に国民的アニメ声優としての出演を目指している井上さん。
今後も謙虚に学び、地道に練習を重ねながら、偉大な先輩の背中を追い続けて、声優としての活動を広げていくのです。
川越みほ
大阪府出身。府内大手テーマパークでスタッフとしての勤務経験があり、現在は関東圏を中心に声優として活動。
2022-04-0718:56Re:
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